9月24日(水)より博多阪急で開催される「ART HAKATA by tagboat 2025」。
タグボート初出展となる小田川史弥の作品は、柔らかく穏やかな空気を纏いながらも、どこか不穏な気配を感じさせます。日本画の技術を基盤に余白をもって描かれる情景は物語性を帯び、その背景にあるストーリーを想像せずにはいられません。
柔らかな筆致と揺らぐ色彩で描き出される人と人との関係に潜む儚さは、鑑賞者の記憶と重なり静かな物語を紡ぎ出します。
小田川史弥は、現代を生きる私たちの何気ない日常を、夢の中あるいは遠い記憶のような危うさと温もりをもって描きます。作品がまとう雰囲気は幻想的でありながらも、どこか憂鬱で怪しげな気配を孕んでいます。
テーブルに置かれたグラスや果物、寄り添う人影、道を歩く犬など、描かれるモチーフは淡い色彩の中で揺らぎ、現実と非現実の境界に立ちながら、静かに心に沁み込んでいきます。それはまるで誰かの秘密を垣間見たような感覚をもたらし、目を逸らすことのできない印象を与えるのです。
「人が誰かと親密になるとき、その影では別の誰かとの関係が消えていくような感覚に興味を惹かれる」と小田川は語ります。築き合う関係に尊さを感じる一方で、ときには消えていく繋がりの儚さを、誰もが感じたことがあるはずです。幸福と共に忍び寄る不安や孤独を、彼は柔らかく揺れる色彩の中に映し込みます。
描かれた情景には、その奥や前後に物語性を感じさせる余情が立ち上がり、鑑賞者それぞれが異なる物語を紡ぎ出します。
近作はアクリル絵の具によって描かれることが多いものの、小田川は東京藝術大学および大学院で日本画を専攻していました。今でも制作の基礎には、日本画が重んじてきた「余白」や「単純化」の表現が息づいています。
余白は画面構成の一部として全体の調和を保ち、呼吸するような静けさを生み出します。この引き算の美学は「侘び寂び」という言葉でも表現されるように、閑寂さの中に美しさを見出す日本独特の美意識が息づいています。
小田川の作品において、引き算の美学は鑑賞者の曖昧な記憶や繊細な感情を呼び覚まし、想像を巡らせる余地を残します。明確な答えのない世界は、観る人の心にさまざまな可能性を宿し、それぞれ異なる記憶や感情と結びつきます。その静けさと余情の中で、私たちは自らの心に秘められた物語と再び出会うのです。
小田川史弥 / Fumiya Odagawa
1996 神奈川県生まれ
2018 東京藝術大学 絵画科日本画専攻 卒業
2020 東京藝術大学 大学院日本画専攻 修了
「制作するにあたって身近なものをその間に、暗示や推測を誘い背景に広がる秘密を想像したような作品にします。 人間が親密になる時、その影で別の誰かとの関係が消えるような気配に興味を惹かれるのです。 その人間関係の間に余白が生まれる、幸福とともに不安や孤独も引き寄せられます」
【受賞歴】
2015
「金谷美術館コンクール」褒状
「藝大アートプラザ大賞展」 優秀賞
2016
「SEED山種美術館日本画アワード」 入選
「石本正日本画大賞展」 審査員特別賞
2017
「耀画廊選抜作家展」 耀画廊賞
2018
「東京藝術大学卒業制作展」サロン・ド・プランタン賞 台東区長賞
「美の舎学生選抜展」 優秀賞
2020
「東京藝術大学修了制作展」京成電鉄藝術賞
「ギャラリーへ行こう」数寄和賞
2023
「Muni Art Award」 池永康晟賞
【個展】
2019
「小田川史弥個展」(美の舎/東京)
2021
「小田川史弥個展」 (数寄和/東京)
「昼の流星」(薬膳カレー&薬膳料理 香食楽/東京)
2022
「丁寧に夜をならべて」(MAKII MASARU FAIN ART/東京)
2023
「手ではかる距離」(子の星/東京)
2024
「午後」(ギャラリーイリタム東京/東京)
2025
「休日の残響」(SUSUKI KATSUYA GALLERY/東京)
「明日はまた別の息吹」(YTF GALLERY/台北)
他展示歴多数
開催期間:2025年9月24日(水)~30日(火)
営業時間:10:00-20:00
*最終日は18時終了
会場:博多阪急 1階MEDIA STAGE ※博多駅直結
〒812-0012 福岡県福岡市博多区博多駅中央街1−1
入場料:無料
オンライン販売:2025年9月24日(水)12:00より販売開始いたします。
※オンライン販売は会場がオープンした初日2時間後の12時より開始いたします。
※作品の購入は、各作家サムネイル画像から商品ページへお進みください。
※出品作品は会場でも展示・販売しております。会場とオンラインでの購入が同時となった場合は、会場の購入を優先させていただく場合がございます。何卒ご了承ください。
博多阪急で開催される「ART HAKATA by tagboat」にて、27日(土)と28日(日)は大谷太郎のドローイングイベントを開催いたします。
完成した作品はその場でお持ち帰り可能。軽やかな筆致と、温かみのあるタッチを是非間近でご覧ください。
日時:2025年9月27日(土)・28日(日) 午後1時30分~5時
会場:博多阪急 1階メディアステージ
定員:1日7枠(一組様20分程度)※事前予約制、空きがあれば当日のご参加も承ります。
参加料:11,000円(税込)※当日会場でのお支払いとなります。
サイズ:A4(210mm x 297mm)
お持物:ペットなどお好きな動物のお写真をご持参ください。(デジタルでも可)
※1枚の中に描くのは3匹までとさせていただきます。それ以上をご希望の場合、別途ご相談の上ご案内いたします。
※場合により予定お時間より待ちいただく場合がございます。予めご了承ください。
【ご予約方法】
▼ご予約用URL(阪急・阪神百貨店の予約ページが開きます)
https://reserve.hankyu-hanshin-dept.co.jp/events/detail/pd-1753417444554
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